「ドリルが欲しいのではなく穴が欲しいのだ」というのは「穴を売れ」という意味ではないよ

「ドリルが欲しいのではなく穴が欲しいのだ」というのは「穴を売れ」という意味ではないよ

マーケティングの話になると、よく言われる「ドリルを買う人は、ドリルが欲しいのではなく穴が欲しいのだ」という言葉。普段からセールスに走っている人は「なるほど!」と素直に受け取るかもしれませんが、鵜呑みにしてしまうと痛い目を見るかもしれません。

「その穴は何のための穴?」

ドリルを買うことが目的ではないのと同じように、ほとんどの場合は穴を開けることが目的ではありません。何らかの意図があり、何かを実現したくて穴を開けるわけです。であるならば、そもそもその穴は何をしたいから開けたい穴なのかを知る必要があります。

場合によっては、穴を開けなくても実現できる方法があるかもしれません。ユーザが実現したいことを理解して、ユーザのために最善なことを提案することこそがプロの仕事というものでしょう。ときには安易にセールスに走るのではなく、自社の売り上げにつながらないようなことでも伝えてあげるほうが、結果的に大きな利益となることもあります。

「かっこいいドリルが欲しいんだい!」

「ドリルが欲しいのではなく穴が欲しい」の話をすると、時々あるのがこの「いや、かっこいいドリルが欲しいだけなんだが」という話。こういうユーザがいるのも確かです。

別に穴を開けたいわけではなく、ドリルの造形美に魅かれてしまう。どんな製品にもコレクターと呼ばれる人は一定数いそうですよね。こういった人に対しては、いくら穴のことを伝えてもピンとこないかもしれません。

「穴フェチなんです、とにかくたくさんの穴を開けたいのです」

とかくニーズが多様化している現代。「穴を変えるためのドリルが欲しい」ことには違いがないけど、その穴には何の意味もない、といったこともあるでしょう。

たくさんの穴を短時間に、とか、いろいろな形の穴を開けたい、とか、特殊な材質のものに穴を開けたい、とか、これらの中でもさらに実現したいことは多岐にわたりそうです。「穴を開けること」が目的でも、欲しい穴はやはり違うかもしれません、

多様なニーズのうち、どれをターゲットにする?どれを外す?

さて、こういったことで、ドリル一つをとっても人によって実現したいことは様々、また売る側が思っている以上に多種多様なニーズがあることが分かるかと思います。多様なニーズがあれば、それぞれにぴったりの製品も変わってくるでしょうし、それぞれのニーズに合わせた売り方、製品の紹介の仕方があるわけです。

特に中小企業では、人手も資金も大きな余裕はない場合がほとんどです。そういったときに、いったいどういったニーズへ向けて売っていくのか、この視点は非常に重要なものになります。

「ドリルが欲しい」という人のうち9割がたはこのニーズだよね、といったものがあるとするならば、ユーザの母数は多いですがその分競合も狙ってくるでしょうから、競争が激しくなってきます。多くの製品の中で選んでもらうための策というのも必要になってくるでしょう。

また逆に、「特殊だけどこんなニーズもあるよね」というポイントに絞ると、そのニーズの人は確実に見つけてくれるが、母数が少ないという状況に陥ります。それこそ、年間の目標売上数が10台とかであればそれもありですが、年間1万台ともなると、母数が少ないのは致命的です。

どこを狙い、どう売るか?

多種多様なニーズがある、ということを意識して、自分たちの商品をどんなユーザに届けるのか。ここをきちんと考えてプランを立てていかないと、あっちのニーズも、こっちのニーズも、となって、二兎追うものは一兎も得ず、どのニーズのユーザにも響かずに売れない、ということも良くある話です。

どのニーズ、どのユーザをターゲットにして、そのユーザに対して最も響く方法で売る(もちろん商品性もユーザに合わせる)、これをきちんと考えましょうという示唆を含んでいるのがこの言葉だと思っています。

多種多様なニーズがあるということ忘れずに。それぞれに合わせた売り方がある、ということも忘れずに。

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